不作だった夏ドラマ…満足度で見る夏ドラマ総括、視聴者を満足させたカギは「成長」
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7月スタートの夏ドラマの放送が終了した。視聴率では山下智久、新垣結衣らが出演する『コード?ブルー~ドクターヘリ緊急救命~THE THIRD SEASON』(フジテレビ系)が平均14%以上と他作と3%以上の差をつけ圧勝という結果だった(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。だが“視聴者満足度”という点ではどうだったのだろうか。
データニュース社が行なっているテレビ視聴アンケート「テレビウォッチャー」では地上波の全番組を対象に毎日“満足度”を回収している。そのデータを分析していくと、夏ドラマの満足度を左右したのは“成長”というキーワードだった。
●データニュース社「テレビウォッチャー」調査概要
?対象局…地上波7局
(NHK総合、NHK Eテレ、日本テレビ、テレビ朝日、TBS、テレビ東京、フジテレビ)
?サンプル数…関東1都6県
20代~70代の男性1,200人/女性1,200=計2,400 ※回答者数は毎日変動
?調査方法…
毎日同一のモニターにテレビ視聴に関するアンケートを配信、データを回収するウェブ調査
?調査項目…
視聴もしくは録画の有無、満足度(5段階評価、3.7以上を高満足度に基準)、
番組の感想(自由記述)、誰と視聴したか、次回視聴意向等
●満足度もナンバー1『コード?ブルー』…役者とキャラクターの成長を楽しんだ
7月スタートの夏ドラマ(プライム帯)で満足度トップを獲得したのは視聴率と同じく『コード?ブルー』で3.98(5段階評価)。初回満足度3.95と夏ドラマで唯一高満足度の基準3.7を超える好スタートを決め、2話以降も3.9台を一度も下回ることがなく、最終回満足度も4.03と、どのドラマよりも高い数値でフィニッシュした。
視聴者の感想から好調だった理由を紐解くと「今では売れっ子俳優になった出演者たちの成長と役の成長がリンクしていて良い」(39歳女性)、「新人だったドクターたちが成長して物語に奥行きが出ている」(55歳女性)など、人気シリーズ7年ぶりの復活で、役者とキャラクターそれぞれの“成長”が垣間見えたことが満足度につながったようだ。またネット上で指?Δ気譴? “恋愛要素”が増えたことによる賛否両論については、最終話までに集まった全回答1,628件の感想のうち、恋愛要素について言及したコメントはわずか46件と全体の約3%にとどまった。
そしてその恋愛要素について触れた意見のうち20件は「恋の行方が気になる」(32歳女性)、「ドキドキな恋愛展開と人間味があって魅力的なドラマ」(33歳女性)など意外にも好意的な意見で、「テレビウォッチャー」では、格段に賛否が別れるというほどではなかった。しかし全体からみればわずかだが、「恋愛パートが長くて退屈」(44歳女性)、「コード?ブルーに恋愛話は盛り込まなくていい」(55歳女性)など、否定的な意見があったことも確か。映画へと続いていく今作だが、もし以降もシリーズを続けるのであれば、それらの不満点を無視することなく、いかに『コード?ブルー』らしく成長させていくかが今後のカギとなるだろう。
●主人公の成長を、視聴者も親心のように見守った『過保護のカホコ』
満足度第2位は高畑充希主演の『過保護のカホコ」(日本テレビ)で3.78。「過保護に育った子供と母親がどう成長していくのか楽しみ」(40歳女性)、「過保護に育てられた女性が成長していく姿が面白かった」(33歳女性)、「カホコが成長した姿にはちょっとうれしくなった」(33歳女性)など、主人公 “カホコ”の成長を見守る楽しみが高満足度につながった。
またこのドラマで脚本を務めた遊川和彦氏の作品というと、最終回の展開で賛否を起こすことで有名。主人公がこん睡状態のまま目覚めなかった朝ドラ『純と愛』(NHK総合)や、最終回の終盤で主人公に突如死が訪れた『○○妻』(日本テレビ)など、バッドすぎるエンディングで視聴者を驚かせてきた。だが今作は、主人公の恋模様も彼女を取り巻く家族や親戚たちのサイドストーリーもすべてが丸く収まるという、絵にかいたようなハッピーエンド。「素敵なハッピーエンドでした!またやることがあったら見たい!」(25歳女性)、「愛にあふれたすっばらしいドラマ。またスペシャルでみたいな」(34歳女性)、「めちゃ感動。スペシャルやってほしい」(33歳女性)などといった続編を望む声も多く、最終回の満足度も3.78と高い数字でフィニッシュした。
●武井咲の意外な好演に役者としての成長を感じた『黒革の手帖』
その他“成長”をドラマのなかで感じさせ、高満足度を記録したのは第4位に人った『黒革の手帖」(テレビ朝日)で3.72。これまで、名だたる女優たちが主役を務めてきた同シリーズだが、今作は若干23歳の武井咲が、元銀行員で巨額の金を横領し、銀座のクラブママへ転身するという悪女役に挑戦。一歩間違えれば“まだ早い”と満足度を下げそうだが、「武井咲が主人公を予想以上に上手く演じていた」(40歳男性)、「米倉涼子版の印象が強いので武井咲に不安だったが、清純な顔と悪女の二面性が見られてとても面白かった」(50歳女性)、「武井咲さんの渾身の演技にハラハラした」(23歳男性)など、武井咲がいい意味で予想を裏切る貫禄の演技を見せ、女優としての成長を視聴者が感じたことで満足度が高まった。
●“成長”がうまくはまらず、夏クール満足度最低に沈んだ『セシルのもくろみ』
一方、“平凡な主婦が一流モデルに”という成長物語でありながら、その成長ぶりに共感できないと満足度を下げてしまったのが真木よう子の『セシルのもくろみ」(フジテレビ系)。満足度は3.09と夏ドラマ最低で、テレビウォッチャーのデータが残る2012年4月期以降のドラマ(プライム帯)で過去最低となってしまった。
ここまで満足度を下げてしまった要因は「真木さんのべらんめえ口調がなじめなかった」(55歳女性)、「真木よう子、好きだけど、この役はなんか嫌」(47歳女性)など、ネガティブな意見を寄せている視聴者のほとんどが真木よう子演じる主人公のキャラクターへの違和感。そして「ストーリーにリアリティーがなく、がさつな印象しか残らなかった」(52歳女性)、「見ていて現実味がないのはキャステイングと設定に無理があるから」(61歳女性)、「主人公の人物描写が非現実的すぎて、今一つ人り込めない」(49歳男性)など、“リアリティー”について触れた感想も多く、そのネガティブな意見が中盤、終盤に差し掛かっても収まらなかったことが大きく満足度を大きく下げてしまった要因となった。
なお、ワースト2位は『僕たちがやりました』(フジテレビ系)で3.43。高校生たちの成長を過激に描いたことが賛否両論となり満足度は伸びなかった。ワースト3位は『警視庁いきもの係』(フジテレビ系)で3.45。ヒロイン橋本環奈のコメディエンヌぶりには女優としての成長を感じさせたが、全体的にゆるい作りが高い満足度にはつながらなかったようだ。
●高満足度ドラマはわずか4作のみで、12年以来過去最低だった夏クール
7月スタートの夏ドラマで、平均値が高満足度の基準3.7を超えた作品は『コード?ブルー』(3.98)、『過保護のカホコ』(3.78)、上川隆也主演の『遺留捜査』(3.73/テレビ朝日系)、『黒革の手帖』(3.72)の4本のみ。クール毎に放送されるドラマの本数にも関係するが最大で11本(15年秋。区切りが変則的なNHKドラマを除く)、前4月クールでも9本と、ここ最近はコンスタントに高満足度ドラマが誕生していたのだが、この夏のドラマは全体的に“不作”で元気のないクールとなってしまった。だが高満足度作品が最も多かったのは秋クールだったように、毎年秋は満足度の高い作品が多い“豊作”の時期。秋ドラマに期待だ。