初回は相武紗季の回。二回目は北川景子の回。そして三回目は山Pの回である。結局、序破急できたか。まあ、三角関係では基本のリズムだよな。
今回も「A DAY IN THE LIFE/THE BEATLES」のインストゥメンタルが挿入される。今回は莉子(北川)と川崎(伊藤英明)が会話をするシーンで性急に関係を結ぼうとする川崎を莉子が言葉巧みに拒絶する場面である。今回のアレンジはピアノをバックにギターがメロディーを奏でていく。妄想を膨らませればピアノが菜月(相武)でヴァイオリニストの莉子がギターということになるだろう。お茶の間の多くは菜月と莉子を全くベクトルの違うキャラクターと受け取るかもしれないが???二人は血液型も同じO型だし、同じコインの裏表である。この曲の作為的な使い方があざといのでまず間違いないだろう。二人はさりげなくパートナーチェンジをしながら「女の子の愛の形」を山P相手に踊るのである。もちろん莉子は「自分が落ちた楽団に受かった女友達のコンサートを鑑賞する屈辱がわだかまる人生のある日」なのである。
視聴率は↗14.0%である。平均は14.3%で「婚カツ!」の三回目までの平均12.3%を上回っている。裏番組は「水戸黄門」13.4%、「ニュース」12.9%、「TVタックル」12.3%、「深イイ話」10.5%、「やりすぎコージー」*6.4%で時間帯のトップになっている。まだまだ予断は許さないが「婚カツ!」が残した残土は除去されつつある模様。月9復興の兆しである。
本題に入る前に恒例の週末の視聴率チェック。「オルトロスの犬」11.4%(「スマイル」の後番組というマイナス要素を除いてもタッキー&錦戸ではものたりない数字???もう少し知能設定アップを期待したい)、「メイド刑事」↘8.0%(時代劇だからな???)、「華麗なるスパイ」↘*8.3%(メイド刑事に辛勝)、「リミット」↗*6.1%(モキュ上げキター)、「怨み屋本舗R」↗*4.4%(不吉な微上げキター)、「イケ麺」↘*2.1%(微下げだがどうでもいい)、「官僚たちの夏」↘*8.0%(メイド刑事と並んでどうする)、「天地人」↘21.0%(どんとはれ殿のおそばにいたいのです???魔女裁判の香織と菊姫同じキャラかよっ)???以上。
で、『ブザー?ビート~崖っぷちのヒーロー~?第3回』(フジテレビ090727PM9~)脚本?大森美香、演出?西浦正記を見た。とりかえしのつかないことをしてしまった時、すぐにとりかえしがつかないことをしてしまったと本人が分るとは限らない。ビーム?サーベルで愛する人の搭乗するモビルアーマーを粉砕してしまえばすぐに言えるセリフが「愛」を壊した時にはそうと悟るまでに時間がかかることがある。人は若さゆえのあやまちというのを認めたがらないものだから???ずっとずっと後までなぜあの「愛」が失われてしまったのか判らなかったりもするのだ???いい加減、ガンダムネタ禁止の警告に気がつけよ。
もちろん、それほどにとりとめないことだから???愛が死んだのにまた復活することもある。ここが恋愛ドラマの醍醐味だ。とにかく???今回は直輝(山下)が菜月の愛を失うまでの一部始終を緻密にそして冷酷に描いていくのである。
さて、まず???直輝は一人のプロのスポーツマンとして崖っぷちに追い込まれていることの念押しである。その象徴が所属クラブのロッカールームの光熱費削減だ。プロは体が資本だから不注意なケガは避けるのが基本である。そのプロ選手たちの部室の蛍光灯が半分に減らされ、部屋が薄暗くなる???ということは心理的なわびしさとは別に選手の健康管理能力をチームが失いつつある一つの証拠である。薄暗さの中で転倒などの事故が起きることのリスクを危機管理担当者が安く見積もっているのである。ものすごい危機である。
しかし???選手たちは笑い事ですませようとする。
経済的理由から転居を余儀なくされた秦野(溝端淳平)の身の上もジョークの種だ。その秦野と数万円しか年棒の変わらない直輝も笑いの輪に加わる。
「こんなとき???お金持ちの恋人がいたら???」と嘆く秦野に「そんなこと言うな???女は守ってやるものだ」とコーチの川崎が言えば直輝も尻馬にのって同意するのである。
そんな直輝の無邪気な笑顔を???代々木(金子ノブアキ)は嘲笑う。
直輝には二年間も交際している恋人?菜月がいる。前のシーズンで「優勝したら結婚しよう」と制約つきのプロポーズをした直輝だったが???優勝を逃し???結婚話は棚上げになっていた。
そんな直輝と二人きりの夜。自慢の手料理を菜月の部屋で調理した直輝に菜月はあらためて「結婚」を申し出る。
菜月にとって結婚は二人で家庭を築き上げていくもの。菜月は直輝の崖っぷちの状況をすべて理解した上で???共に苦労を分かち合おうと持ちかけているのである。
それに対して直輝は「自分の考える経済的な問題や???将来に対する不安???そして恋人に対する心理的優位性を失いたくない」など様々な気持ちから「今はまだ待ってくれ」と菜月に告げる。「状況はもっと良くなるはずだから」と問題を先送りにしたのである。
直輝の心には菜月とのびしょびしょ濡れのトレーナーが渇くまで抱きあった夏の昼下がりの記憶がある。直輝は将来を不安に思いながらも根拠のない自信を持っていて同じように菜月の心がまだ自分だけに向いていると楽観しているのである。
しかし???すでに菜月は代々木と火遊びの一夜をともにしている。
お茶の間だけは知っている???「こんな俺でごめん」と直輝が菜月を抱きしめたとき???菜月がどこか遠くを見つめていることを。
直輝は崖っぷちに立ち、すでに足は崖からはみ出して???爪先が蹴った小石が奈落へと転がっているのである。
菜月は直輝が自分を拒絶し???拒絶したことにも気がつかないA型ならではの鈍感さで囁く愛の言葉を途方にくれた思いで聞く。また許さなければいけないのか。
この男の子供じみたわがままを。
秦野の住居問題を解決するために母親(真矢みき)に空き部屋の使用を相談する直輝。
菜月はなんと言っただろうか。「この部屋で一緒に暮らしましょう」???菜月は直輝に精神的な自立を求めているのである。しかし???直輝はそんなことには全く思いが及ばない。菜月が深層心理では「敵視」している母親に甘えるのである。そこに突風のように現れる嫁いだ姉?雪乃(ちすん)???。夫の「浮気」に立腹しての里帰りである。小姑ダブルかよ???。妹の優里(大政絢)はまだしもこの弟を支配している風な姉の態度。
直輝の片足はほとんど宙に浮いている感じになりました。
そんな直輝の危うさを全く知らない莉子は???これから若かったなにもかもが???を始めるのである。
初対面から直輝に強く惹かれている莉子は???ルームメイトの麻衣(貫地谷しほり)が菜月を批評して言うところのスポーツ選手を「彼氏」にしちゃうタイプである。莉子と麻衣は似た者同志なのだ。
莉子はコーチの川崎から交際を申し込まれ、キスも奪われ、デートもする仲だったが???直輝に一目惚れをしている。無自覚の風を装ってはいるが???莉子ははっきりと直輝を「男」として意識している。直輝に恋人がいると知れば苛立ち、直輝に対して川崎から「恋人」として紹介されれば不本意なのである。莉子は「直輝と自分」が恋人でないことの落胆を隠さない。
そして???直輝の姿を求めて「いつもの公園」にやってくるのだ。
直輝はそんな莉子の気持ちをある程度は知っている。しかし、直輝は自分の気持ちを隠すし、それに気がつかないふりもできる。
ヴィヴァルディの協奏曲「夏」は雷鳴をソロヴァイオリンが奏でる。突然、嵐のように二人は接近したお互いの顔を見つめる。二人は互いを意識しているのだ。
そんな二人のために粗大ゴミを公園に不法投棄するチンピラたち。これは「おい、あんたたちいいムードだね???ちょっとオレたちにも分けてよ」パターンの奥ゆかしい変形である。
ビールのために大胆になった莉子は犯罪者との追跡劇を繰り広げ警察まで介入して大騒ぎである。しつこいようだが「体が資本のスポーツ選手」にとっても「指が大事な芸術家」にとってもあってはならない逸脱である。
しかし二人は白いスニーカーを汚さないように裸足で雨の中を歩くのだ。
それは青春の血が騒ぐからなのである。それはかっての菜月と直輝の姿でもある。しかし、菜月が一足先に大人になろうとしているのに対し???直輝はまだ青春が不足しているのである。だから???莉子の部屋へ行き???青春仲間に趣味の清掃や調理で恩をほどこすのである。それが???父親が離婚して去っていた女系家族に躾けられてしまった直輝の女に対するいつものアプローチなのである。
「しけたチームに来てしまった」と嘆く代々木が「コートではボールを追い、コートの外では女を追う」ように直輝は「コートの中ではボールを追い、コートの外ではフレンチトーストを作る」のだった。
だから、直輝は???危機的状況にありながら浮気を始めた???ということだ。
そして???再び???直輝と菜月。代々木の歓迎会から???代々木の挑発的な誘惑に耐えかねた菜月は体調不良を口実に直輝を誘って抜け出した。
その菜月の嘘を真に受けて???「お粥」を作り始める直輝。
しかし、菜月は正直に「それは嘘で???直輝と愛し合いたいだけだ」と打ち明ける。しかし、直輝は耳を貸さない。菜月とともに新しい生活を始める気持ちがさらさらないからである。その次のステップに踏み出す勇気がない以上???菜月の求愛は鬱陶しいばかりなのである。
なぜなら???直輝は???想像もつかない大成功をおさめて菜月を幸福の絶頂に導くという自分の夢にこだわっているからである。それ以外の形で菜月と生きていくのは嫌なのだ。
そうである以上???今の菜月は???ダメな自分の恋人にすぎないタダの女なのである。
その夢を破壊しようとする菜月から目をそらし、顔を背ける直輝。
その不実な態度についに菜月の堪忍袋の緒は切れたのである。
「なによ???いつかはいつかはって???小学生みたいなこと言って???今がその時なのよ。今はもうやらなければいけないときなの。現実を見ないでどうしてステップアップすることができるの。目をつぶってシュートをしてどうするの。あなたのプライドは誇り高き男のものじゃない。ただの卑怯者の言い訳でしょう???」菜月はたちまち???とりかえしのつかないことを言ったと気がつき「ごめんなさい」と謝罪する。
しかし???直輝は脱兎の如く逃走するのだった。
そして???いい年して(実際には)恋人もいない川崎に誘われるままに「海」へと出かけていくのだった。
そこには青い空とつかのまの慰めがある。白く浮かんだ水着の跡をなぞって雷の音を聞くために太陽が降り注ぐ。
そこで芸術家で虹を捜しているから水着にならない莉子にものたりなさを感じた直輝は「夏の桟橋」とともに菜月に謝罪のメールを送る。
しかし???すでに直輝の足元には崖っぷちはないのである。もうとりかえしのつかないことをしてしまった後なのだ。ただ???直輝はそのことに気がつかない。
もちろん???わがままは男の罪だがそれを許さないのは女の罪なのだ。
代々木に抱かれながら菜月の瞳にはもつれた糸をひきちぎられた女の痛々しい光が浮かんでいる。しかし、直輝という「元の彼氏」にはできなかった。どうしても???大人の恋愛は???この頃には。
そういう「男」を山Pが切なく演じきったのだった。まあ、チューベローズに続いてチューリップがやりたかっただけなんですけどね。ああ???虹とスニーカーの頃よ???なのでございます。